「電子書籍の作り方 — EPUB、中間ファイル作成からマルチプラットフォーム配信まで」を読みました。出版社は技術評論社。全 239 ページ。2010 年 12 月 9 日発売。著者は境祐司さん。境さんの Twitter アカウントは @commonstyle です。
電子書籍の作り方 (PCポケットカルチャー)
境 祐司
技術評論社 2010-12-09
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本書の第一章は、電子書籍の歴史を丁寧に説明しています。ePub の成立について詳しく知ることができます。ePub 以外のフォーマット (.book や XMDF) の発展も知ることができます。現在、流通している電子書籍のメイン・フォーマットについて、最低限に知識を得ることができます。
第二章は電子書籍リーダーの汎用的な機能説明です。主に ePub と AZW (Amazon の Kindle の形式) を対象にしたリーダーの説明をしています。これは、おそらく ePub リーダーと Kindle が現在最も電子書籍リーダーとして進んでいるからでしょう。
第三章は ePub を作成するためのフローチャートを説明しています。本書のキモは、この第三章でしょう。
第三章では、代表的な ePub 作成ソフトを二つ紹介して、その欠点を指摘しています:
- Adobe InDesign は正しい ePub 出力をしない
- Sigil は大量のドキュメント (特に日本語) を扱うと落ちる
これでは ePub を作成できないので、境さんなりの「暫定ワークフロー」(InDesign と Sigil を使い分けるフロー) が紹介されています。現状、ePub をちゃんと作ろうと思ったら、この暫定ワークフローは必読ではないでしょうか?
第四章はテキスト・素材について。境さんは複数の電子書籍フォーマット対応を睨む必要を説いています。そのためには、ワンソース・マルチユースでなくてはなりません。肝心のワンソースですが、何を中心に持ってくれば良いのか? どういう注意をしなければいけないのか? これらの解説をしています。
第五章から第七章は具体的な ePub 作成について書かれています。第三章で紹介したワークフローに沿った上で、InDesign や Sigil をどの様に駆使するのかが書かれています。例えば、見出しレベルの設定、改ページの追加、プロトタイプの作成方法、マルチ・デバイス対応への知識などです。
レビュー
電子書籍の本としては新しめで、最新情報を多く取り込んでいる点が光ります。
対象とする読者は、電子書籍を知らない人から、ePub を実践的に作ってみようという人まで幅が広いです。対象読者層の広さにもかかわらず、内容はよくまとまっています。
本書を読んで苦々しく思うのは、二点です。一点目は ePub 作成が簡単でないこと。二点目は作った ePub を販売する方法が説明されていないこと。二点とも本書が悪いのではなく、現在の ePub 作成における難しさが前に出ている結果です。一点目は InDesign や Sigil 自体に問題のあることですし、二点目は Apple の iBook Store や Google の eBookstore が (日本で) サービス・スタートしていないことが原因です。
現状、ePub 作成における「良書」と思います。ePub の進化に合わせて改版されることを期待します。
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